蛍硝子とは
蛍硝子 (ほたるがらす)
◆蛍光管廃ガラスのリサイクルによるエコガラスアートの作品を「蛍硝子」と命名する。
蛍光管ガラスは、もともとガラス管に蛍光粉がコーティングされていて、それが発光する仕掛けになっている。
低温焼成による再生なので、蛍光粉の特性が消滅しない。又、蛍光粉を残しながら水銀だけを除去している。したがってこの「蛍硝子」は「灯り」として作品化すると、ガラス面全体が発光体となって、光源が見えにくい良さがある。
LEDを仕込めば熱も発生しない。まさに蛍の光そのものである。
蛍は水のきれいな美しい自然環境の中でしか生息しない。
蛍が生きられるような自然環境を人類は守っていかねばならないというメッセージも込めて、この蛍光管リサイクルガラスを「蛍硝子」と呼ぶことにする。
◆ これまでの蛍光管リサイクルは、この蛍光粉を水銀と共にきれいに除去して、もとのソーダガラスの原料に戻すやり方が通常である。
これでは、蛍光管ガラスならではの特性が出ないので、ここは発想の転換で蛍光粉こそ、蛍光管ガラスの特性と位置付け、水銀のみを除去してわざと蛍光粉を残した再生の仕方をして独得の表情を獲得した。そこがこれまでのリサイクルと大きく違う所である。
2011年4月 藤原郁三
蛍硝子の技術特性
- 蛍光管に含まれている水銀は、水洗浄で除去出来ますが、この方法だと新たに水質汚染が発生します。一方、水銀の沸点は367℃ですから、熱処理する(400℃のキルンの中を通す)ことで水銀を除去すれば、水質汚染もクリア出来ます。私共の工房では、この熱処理方法で水銀を除去したガラスカレットを使用していますので安全です。
- 本来のガラス制作では1,300℃の高温が必要ですが、一度ガラスになった物は低温(800℃〜850℃)で溶けます。低温焼成することで元のソーダガラスの原料にもどすリサイクルよりも、エネルギー消費率が1/5で済み、省エネ工房への転換がはかれています。
- 又、低温よる溶解は、蛍光管ガラスならではの特性が消えることなく残り、その結果、玉(ぎょく)のような、大理石のような、和紙のような風合いが出せるようになりました。リサイクルでは、元のものより美しく再生させることが一番大切です。
- いわゆるキャスティングという方法で成形するのですが、低温溶解の為、ガラスの粘性が残り、型のすき間からガラスがもれ出さないので、陶板の組み立てによって成形が出来、その上、私共の陶板は離型剤との相性が良く、ガラスの型に最適であることが解りました。
- これまでの陶壁制作の技術がそっくりそのまま生かせるので、様々な表現のヴァリエーションが可能になりました。建築空間のあらゆるニーズに合わせて、新しい形をその都度デザイン出来るところが大きな利点です。
蛍硝子の材料特性
1. 曲げ強度 30.2 MPa | 比較例 市販ガラス 80.0 MPa 磁器 80.0 MPa 益子焼陶版 20.0 MPa 平成21年栃木県産業技術センターでの試験結果 ※従って20㎜の蛍硝子は6〜8㎜の一般ガラスと同じ強度 |
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2. 吸水率 0% | |
3. 重量(蛍光管使用量) | 300角厚み20㎜で4.5kg 蛍光管(40W直管型1本分)は180gなので25本分の重量 1㎡(25×11)=275本 10㎡=2,750本使用 |
4. 焼成温度 | 850℃×5.5時間(廃蛍光管ガラス) 800℃×5時間(廃板ガラス) |